もうだいぶ前の話ではあるが、旭川医師会の新年会に出席した。歳男・歳女アトラクションに参加するためだ。列になってバンカラの姿で闊歩したあと、全員で肩を組んで、最高齢のアトラクション団長を中心に「札幌農学校は蝦夷ヶ島」を歌い上げた。そのあと歳男・歳女の医師たちと一緒に妖怪体操を踊るという流れだ。人前で踊るなんて….そもそもこういうことは若い人がやるのでは?….直前までもんもんとした気持ちで挑んだ妖怪体操。しかし、いざ本番に挑むとなんと私は参加者のなかで最年少!おまけにみなさん笑顔笑顔!!更に踊りは完璧ではないですか!!!顔にメイクをしたり、理解困難な歌詞の意味まで教えてくださった先生もおられた。
楽しげに踊っている諸先輩先生をみて、恥ずかしいと気遅れしていた自分はなんて小さな人間なのだろうと、アトラクション後のレセプションは本当に恐縮な思いだった。参加者の中には1回りどころか2回りも、さらには3回りも年上の先生もおられた。 3回りも年上の諸先生方と比べると、現在旭川の要所におけるトップとしてご活躍されておられる諸先生方は正直いってまだ青さの残る若頭にも見え、そして自分自身はといえば…ほんとうに全くの「ガキ」であることを痛感した限りだった。そして一人前のつもりで、ともすれば上から目線で診療してきたこれまでの自分を本当に恥ずかしく感じた次第だった。
人生を12年単位で考えた。12年後、私は諸先輩と同様に、地域の医療を引っ張っていけているのだろうか?24年後、私は諸先輩と同様に、地に足が付いた職を全うできているのだろうか?そして36年後、私は諸先輩と同様に、皆の前で口上を読み上げることができるだろうか?自分の足でそこに立ち、大勢の後輩たちの前で胸を張り、大きな声と力強い眼差しで、後輩たちを叱咤激励することができるだろうか?そのために自分は今,何を思い何を考え何を学ぶ必要があるのだろうか?…その答えは教科書には決して書かれてはいない、唯一そこを生き抜きそして今ここで毅然と立っている人間からでしか学びとることしかできないことなのであろう。諸先輩の背中をみながらこの企画への参加、自分は大いに勉強になった、参加してよかったと心から思った次第なのである。
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入院・外来の患者さんのほとんどは私よりも年上である。1回りはおろか、2回3回り、それ以上も年上で、様々な経験を積んで生きてきた人生の先輩がたである。そんな患者さんを前にして、私はまさか尊大な態度でいやしないだろうか?椅子にふんぞり返って、さも偉そうな雰囲気ではないだろうか?「患者さんが真ん中の医療」そう言ってみたところで、心の深いところで真摯に受け止めない限り、その言葉はなんら活きてはこない。
今宵も枕元で、甘くて弱い自分を叱咤するバンカラ共のストームが吹き荒れる。「醒めよ 迷いの夢 醒めよ・・・」と。
旭川リハビリテーション病院副院長